個人再生の二つの型|小規模個人再生と給与所得者等再生は、どこで分かれるか
個人再生は一つの手続に見えて、民事再生法では別々の節に置かれた二つの特則です。共通の入口である221条1項から、小規模個人再生の最低弁済額(231条2項)、給与所得者等再生だけにある可処分所得2年分の下限(241条2項7号)、弁済期間の刻み方まで、条文を並べて違いを確かめます。

個人再生は一つの手続の名前のように語られますが、民事再生法のなかでは別々の節に置かれた二つの特則です。小規模個人再生(221条以下)と、給与所得者等再生(239条以下)。裁判所も、個人再生には①小規模個人再生と②給与所得者等再生がある、と説明しています。どこが同じで、どこで分かれるのか。この記事は、その二つを条文で並べて比べるものです。どちらを選ぶべきかは述べません。
出典:個人再生(裁判所)(2026年9月28日確認)
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| 小規模個人再生 | 給与所得者等再生 | |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 民事再生法221条以下 | 民事再生法239条以下 |
| 使える人 | 個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額、再生手続開始前の罰金等の額を除く)が5,000万円を超えない者(221条1項) | 221条1項に規定する債務者のうち、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつその額の変動の幅が小さいと見込まれる者(239条1項) |
| 申述の時期 | 再生手続開始の申立ての際(債権者が申し立てた場合は開始決定があるまで)(221条2項) | 同じ(239条2項) |
| 返す額の下限の決まり方 | 計画弁済総額が、基準債権の総額に応じた額を下回ると不認可(231条2項3号・4号) | 小規模個人再生の基準に加え、可処分所得を基準とする額を下回ると不認可(241条2項5号・7号) |
| 再度の利用の制限 | 条文上の7年制限の規定は239条5項2号に置かれている(給与所得者等再生の側) | 給与所得者等再生における再生計画の遂行など一定の事由の日から7年以内の申述は、小規模個人再生により行う旨の決定または申立ての棄却(239条5項2号) |
| 弁済の期間 | 弁済期が3か月に1回以上到来する分割払。最終の弁済期は認可決定確定の日から3年後の日が属する月中の日(特別の事情がある場合は5年を超えない範囲)(229条2項) | 244条により229条を準用 |
出典:民事再生法 第221条・第229条・第231条・第239条・第241条・第244条(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)
共通の入口:221条1項
どちらの型も、まず221条1項の要件が出発点です。①個人である債務者であること、②将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること、③再生債権の総額が5,000万円を超えないこと。この③の総額からは、住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額、再生手続開始前の罰金等の額が除かれます。
裁判所も「将来において継続的に収入を得る見込みがあって、無担保債務の総額が5000万円以下の人が申し立てることのできる小規模個人再生」と説明しています。出典:個人再生(裁判所)(2026年9月28日確認)
分岐点その一:小規模個人再生で下回ってはいけない額
231条2項は、小規模個人再生において裁判所が再生計画不認可の決定をする場合を列挙しています。そのうち3号と4号が、計画弁済総額の下限を定めています。
| 基準債権の総額(無異議債権の額および評価済債権の額の総額) | 計画弁済総額がこれを下回ると不認可 | 条文 |
|---|---|---|
| 3,000万円を超え5,000万円以下 | その総額の10分の1 | 231条2項3号 |
| 3,000万円以下 | 基準債権の総額の5分の1、または100万円のいずれか多い額 | 231条2項4号 |
| (同上・かっこ書) | 基準債権の総額が100万円を下回っているときは基準債権の総額 | 231条2項4号 |
| (同上・かっこ書) | 基準債権の総額の5分の1が300万円を超えるときは300万円 | 231条2項4号 |
この総額の計算からは、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権と、民事再生法84条2項各号に掲げる請求権が除かれます(231条2項3号・4号)。出典:民事再生法 第231条(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)
分岐点その二:もう一つの下限(清算価値)
231条1項は、小規模個人再生において再生計画案が可決された場合、174条2項(住宅資金特別条項を定めたものであるときは202条2項)または231条2項の場合を除いて認可の決定をする、という構造になっています。その174条2項4号が挙げるのが「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき」です。給与所得者等再生についても、241条2項2号が「再生計画が再生債権者の一般の利益に反するとき」を不認可事由としています。出典:民事再生法 第174条・第231条・第241条(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)
条文が置いているのはこの文言までで、具体的な計算方法は書かれていません。実務で「清算価値保障原則」と呼ばれている考え方はここに由来しますが、その算定方法について公的機関が公表している一般的な基準を確認できなかったため、この記事では計算例を示しません。
分岐点その三:給与所得者等再生だけにある「2年分」
241条2項7号は、給与所得者等再生に固有の不認可事由です。計画弁済総額が、同号イからハまでに定める額から「再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用の額」を控除した額に2を乗じた額以上であると認めることができないとき、不認可の決定をするとされています。
イからハまでは、収入の額をどう年額に換算するかの場合分けです。ハが原則形で、「再生計画案の提出前二年間の再生債務者の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を二で除した額」。イは、提出前2年間の途中で再就職その他の年収について5分の1以上の変動を生ずべき事由が生じた場合、ロは、提出前2年間の途中で給与等の定期収入を得ている者に該当することとなった場合です。所得税等には、所得税、個人の道府県民税または都民税、個人の市町村民税または特別区民税、森林環境税、および所得税法74条2項に規定する社会保険料が含まれます。出典:民事再生法 第241条第2項第7号(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)
「最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用の額」の具体的な算定は政令等に委ねられており、この記事では金額を示しません。
分岐点その四:債権者の関わり方
給与所得者等再生には、241条1項に「前条第二項の規定により定められた期間が経過したときは、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする」という定めがあり、決議に関する規定を置いていません。これに対して小規模個人再生の231条1項は「再生計画案が可決された場合には」という書き出しで、231条2項の不認可事由にも「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」(174条2項3号)などが関わってきます。条文の書きぶりが違う、ということです。
弁済の刻み方
229条2項は、再生債権者の権利を変更する条項における債務の期限の猶予について、「弁済期が三月に一回以上到来する分割払の方法によること」、および「最終の弁済期を再生計画認可の決定の確定の日から三年後の日が属する月中の日(特別の事情がある場合には、再生計画認可の決定の確定の日から五年を超えない範囲内で、三年後の日が属する月の翌月の初日以降の日)とすること」と定めています。244条により、この規定は給与所得者等再生にも準用されます。出典:民事再生法 第229条・第244条(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)
住宅ローンがある場合
住宅資金特別条項(住宅ローン特則)は、この二つの型の分岐とは別の軸にあります。221条3項4号は、債権者一覧表に「住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思があるときは、その旨」を記載するとしており、231条2項5号は、その旨の記載をしたのに再生計画に住宅資金特別条項の定めがないときを不認可事由としています。要件と注意点は個人再生で自宅は残せる?住宅ローン特則(住宅資金特別条項)の要件と注意点にまとめています。
入口の費用(裁判所が公表している範囲)
裁判所は個人再生の申立てについて、申立先を「原則として、債務者の住所地を管轄する地方裁判所」とし、費用を「収入印紙1万円分 連絡用の郵便料、予納金」と案内しています。必要書類は「裁判所ごとに異なりますので、申立先の裁判所へ確認してください」とされています。予納金の額は示されていないため、この記事でも金額を書きません。出典:個人再生(裁判所)(2026年9月28日確認)
弁護士・司法書士費用については、法テラスが任意整理事件と自己破産事件の立替基準額を公表していますが、個人再生事件についての目安は当該ページ群に見当たらず、確認できませんでした。立替制度そのものの条件は弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ(法テラス)(2026年9月28日確認)に掲載されています。
どちらの型かを決める前に
二つの型のどちらで進めるかは、収入の性質と、返せる額の見通しによって変わります。条文を読んで自分で決めるより、次の窓口で一度整理してもらうほうが確実です。
- 弁護士(弁護士会の法律相談センター):「ひまわりお悩み110番」0570-783-110 にかけると、その地域に近い弁護士会の法律相談センターにつながります。全国約300か所で法律相談が行われており、相談時間はおおむね30分、相談料は地域や相談内容により異なるものの5,500円前後と案内されています(受付時間の記載はありません)。出典:ひまわりお悩み110番(日本弁護士連合会)(2026年9月28日確認)
- 司法書士(司法書士総合相談センター):全国約150か所で、借金問題を含む相談を受け付けていると案内されています。出典:司法書士総合相談センター一覧(日本司法書士会連合会)(2026年9月28日確認)
- 法テラス:サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時。祝日・年末年始を除く)。資力の基準を満たす場合、弁護士・司法書士による無料法律相談を1回30分・同一の問題につき3回まで利用できます。出典:法テラス・サポートダイヤル(2026年9月28日確認)/無料法律相談のご利用の流れ(法テラス)(2026年9月28日確認) 当サイトの法テラスの使い方ガイドもあわせてどうぞ。
- 日本クレジットカウンセリング協会:多重債務ほっとライン 0570-031640。公益財団法人であり、相談料は無料と案内されています。出典:公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会(2026年9月28日確認)
- 消費生活センター:消費者ホットライン「188」。契約や取引についてのトラブルの窓口です。出典:消費者ホットライン(消費者庁)(2026年9月28日確認)
- 財務局など:金融庁は、多重債務についての相談先として法テラス・日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会・日本貸金業協会・日本クレジットカウンセリング協会・全国銀行協会を案内し、全国の財務局の多重債務相談窓口の一覧も掲載しています。出典:相談・情報提供窓口(金融庁)(2026年9月28日確認)
どこから当たればよいか決められないときは、当サイトの相談先ディレクトリに窓口を用途別にまとめています。
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この記事の執筆者
マネーガイドジャーナル編集部
金融関連情報サイトの運営実績を多数持つ編集チーム。株式・不動産・FXなど幅広い金融資産の運用経験と、外資系ITコンサルティングファームで金融機関の案件に従事した実務経験をもとに、公式サイト・公的機関の一次情報を確認しながら記事を制作しています。
- 掲載情報は公式サイト・政府広報・金融庁等の一次情報を確認し、確認日を明記します
- 確認できない情報は「確認できず」と正直に記載し、憶測で断定しません
- 特定サービスの利用をあおらず、リスクと公的な相談先を必ず併記します



