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特定調停を自分で申し立てる|簡易裁判所に持っていくもの、決まること、決まらないこと

債務整理のなかで、本人が簡易裁判所に申し立てられる手続が特定調停です。申立てと同時に出す「財産の状況を示すべき明細書」と「関係権利者の一覧表」、専門的知識経験を有する調停委員の指定、執行停止の例外、成立したときの効力まで、条文と裁判所の案内から準備の中身を組み立てます。

特定調停を自分で申し立てる|簡易裁判所に持っていくもの、決まること、決まらないこと

債務整理というと、弁護士や司法書士に依頼する話として語られることがほとんどです。けれども、本人が簡易裁判所に申し立てる手続も法律で用意されています。特定調停です。裁判所は民事調停の説明のなかで、「借金をされている方等がこのままでは支払を続けていくことが難しい場合に生活の再生等を図るために債権者と返済方法を話し合う手続として、特定調停があります」と案内しています。この記事は、申し立てる前に何を用意することになるのかを、法律の条文と裁判所の案内から組み立てたものです。この手続が向いているかどうかの判断はしません。

出典:民事調停(裁判所)(2026年9月28日確認)

用意するもの(条文が求めているもの)

特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律3条3項は、特定調停手続により調停を行うことを求める申述をする申立人について、こう定めています。「申立てと同時に(やむを得ない理由がある場合にあっては、申立ての後遅滞なく)、財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料及び関係権利者の一覧表を提出しなければならない」。出典:特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律 第3条(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)

ここから、準備物は二系統に分かれます。

  1. 財産の状況を示すべき明細書その他、特定債務者であることを明らかにする資料。「特定債務者」の定義は同法2条1項にあり、「金銭債務を負っている者であって、支払不能に陥るおそれのあるもの若しくは事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの又は債務超過に陥るおそれのある法人」とされています。つまり、収入・支出・資産の実際を、書面で示せる状態にしておくことになります。
  2. 関係権利者の一覧表。「関係権利者」は同法2条4項で「特定債務者に対して財産上の請求権を有する者及び特定債務者の財産の上に担保権を有する者」と定義されています。借入先だけでなく、担保を持っている相手も含みます。

具体的な書式は最高裁判所規則および各裁判所の定めによるため(同法23条)、申立てを予定している裁判所にご確認ください。

どこに出すか

裁判所は民事調停について「原則として、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てます」と案内しています。ただし特定調停法4条は、管轄に属しない特定調停に係る事件について申立てを受けた場合に、事件を処理するために適当であると認めるときは、職権で、土地管轄の規定にかかわらず他の管轄裁判所に移送し、または自ら処理することができると定めています。また同法6条は、同一の申立人に係る複数の特定調停事件が同一の裁判所に各別に係属するときは、できる限り併合して行わなければならないとしています。出典:民事調停(裁判所)(2026年9月28日確認)/同法 第4条・第6条(2026年9月28日確認)

費用について、公表されている範囲

裁判所は民事調停の手数料について「手数料の算定方法は、裁判手続の種類によって別表のとおり定められています」とし、例として「10万円の貸金の返済を求めるための手数料は、訴訟では1000円、調停では500円です」と示しています。郵便料については「裁判所ごとに異なります」と記載されています。出典:民事調停(裁判所)(2026年9月28日確認)

債務整理の目的で申し立てる場合に、債権者数や債務額に応じて実際にいくらになるのかは、この案内からは確定できませんでした。金額の合計は申立先の簡易裁判所にご確認ください。

誰が話を聞くのか

同法8条は、「裁判所は、特定調停を行う調停委員会を組織する民事調停委員として、事案の性質に応じて必要な法律、税務、金融、企業の財務、資産の評価等に関する専門的な知識経験を有する者を指定するものとする」と定めています。また9条により、特定調停の結果について利害関係を有する関係権利者が手続に参加する場合には、民事調停法11条1項にかかわらず調停委員会の許可を受けることを要しません。出典:同法 第8条・第9条(2026年9月28日確認)

当事者の側に課されていること

同法10条は、「特定調停においては、当事者は、調停委員会に対し、債権又は債務の発生原因及び内容、弁済等による債権又は債務の内容の変更及び担保関係の変更等に関する事実を明らかにしなければならない」と定めています。12条により、調停委員会は特に必要があると認めるときは、当事者または参加人に対し、事件に関係のある文書または物件の提出を求めることができます。24条1項は、正当な理由なくこの提出の要求に応じないときは、裁判所は10万円以下の過料に処するとしています。出典:同法 第10条・第12条・第24条(2026年9月28日確認)

執行が止まる場合と、止まらない場合

同法7条1項は、事件の係属する裁判所が、事件を特定調停によって解決することが相当であると認める場合において、特定調停の成立を不能にしもしくは著しく困難にするおそれがあるとき、または円滑な進行を妨げるおそれがあるときは、申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせてまたは立てさせないで、特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止を命ずることができると定めています。

ただし同項ただし書に、重要な例外があります。「給料、賃金、賞与、退職手当及び退職年金並びにこれらの性質を有する給与に係る債権に基づく民事執行の手続については、この限りでない」。3項により、申立てをするにはその理由を疎明しなければなりません。出典:同法 第7条(2026年9月28日確認)

まとまったとき/まとまらなかったとき

結末何が起きるか根拠
調停が成立裁判所は「調停調書に記載された内容は、確定した判決と同じ効力があり、この調書に基づいて強制執行を行うこともできます」と案内民事調停(裁判所)
調停委員会が調停条項案を提示その案は「特定債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のもの」でなければならない特定調停法15条
当事者の共同の申立てによる調停条項調停委員会が事件の解決のために適当な調停条項を定めることができる。その条項も公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容であることを要し、申立ては書面で行う特定調停法17条
書面で受諾遠隔地に居住しているなどの事由で出頭が困難な場合、あらかじめ提示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が期日に出頭して受諾したときは、合意が成立したものとみなす特定調停法16条
合意の見込みがない調停委員会は、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容の合意が成立する見込みがない場合等において、裁判所が民事調停法17条の決定をしないときは、特定調停が成立しないものとして事件を終了させることができる特定調停法18条
調停に代わる決定裁判所が適当と認める解決の内容を示す「調停に代わる決定」または「調停不成立」で調停は終了する、と裁判所が案内民事調停(裁判所)

出典:特定調停法 第15条〜第18条(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)/民事調停(裁判所)(2026年9月28日確認)

なお同法11条は、申立人が特定債務者であるとは認められないとき、または事件が性質上特定調停をするのに適当でないと認めるときは、調停委員会が特定調停をしないものとして事件を終了させることができるとしています。申し立てれば必ず調停が行われる、という構造ではありません。

この手続を単独で決めないために

特定調停は本人が申し立てられる手続ですが、どの手続が事案に合うかは、債務の総額・収入の見通し・担保の有無などによって変わります。日本弁護士連合会の会規は、債務整理事件の類型として任意整理・破産手続開始申立事件・民事再生手続開始申立事件・特定調停申立事件を並べており(同規程2条5号)、特定調停はその一つとして位置づけられています。出典:債務整理事件処理の規律を定める規程 第2条(日本弁護士連合会・会規第93号)(2026年9月28日確認) 申し立てる前に、下の窓口のいずれかで一度話を聞いてもらうことができます。

申し立てる前に相談できるところ

書式の書き方そのものは裁判所の窓口で案内を受けられますが、どの手続を選ぶかの整理は、次の窓口で相談できます。

  • 弁護士(弁護士会の法律相談センター):「ひまわりお悩み110番」0570-783-110 にかけると、その地域に近い弁護士会の法律相談センターにつながります。全国約300か所で法律相談が行われており、相談時間はおおむね30分、相談料は地域や相談内容により異なるものの5,500円前後と案内されています(受付時間の記載はありません)。出典:ひまわりお悩み110番(日本弁護士連合会)(2026年9月28日確認)
  • 司法書士(司法書士総合相談センター):全国約150か所で、借金問題を含む相談を受け付けていると案内されています。出典:司法書士総合相談センター一覧(日本司法書士会連合会)(2026年9月28日確認)
  • 法テラス:サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時。祝日・年末年始を除く)。資力の基準を満たす場合、弁護士・司法書士による無料法律相談を1回30分・同一の問題につき3回まで利用できます。出典:法テラス・サポートダイヤル(2026年9月28日確認)/無料法律相談のご利用の流れ(法テラス)(2026年9月28日確認) 当サイトの法テラスの使い方ガイドもあわせてどうぞ。
  • 日本クレジットカウンセリング協会:多重債務ほっとライン 0570-031640。公益財団法人であり、相談料は無料と案内されています。出典:公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会(2026年9月28日確認)
  • 消費生活センター:消費者ホットライン「188」。契約や取引についてのトラブルの窓口です。出典:消費者ホットライン(消費者庁)(2026年9月28日確認)
  • 財務局など:金融庁は、多重債務についての相談先として法テラス・日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会・日本貸金業協会・日本クレジットカウンセリング協会・全国銀行協会を案内し、全国の財務局の多重債務相談窓口の一覧も掲載しています。出典:相談・情報提供窓口(金融庁)(2026年9月28日確認)

どこから当たればよいか決められないときは、当サイトの相談先ディレクトリに窓口を用途別にまとめています。

ほかの手続と比べる

本記事は、法令と公的機関が公開している情報にもとづいて制度の一般的な仕組みを整理したものであり、法的な助言ではありません。どの手続が使えるか、いくらになるか、どれくらいかかるかは事案によって異なり、裁判所や各窓口の運用によっても変わります。個別の判断は、本文および末尾に挙げた相談先でご確認ください。法令・制度は改正されることがあるため、最新の内容は各公的機関の公式情報をご参照ください。

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マネーガイドジャーナル編集部

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