自己破産をしても手元に残るもの|破産法34条と「99万円」の出どころ
「99万円は残る」という数字は、破産法の条文には直接書かれていません。破産法34条3項1号から民事執行法131条3号へ、さらに施行令へと三段に連なる参照をたどると、66万円に2分の3を乗じた額として現れます。差押えが禁止される動産・債権の一覧と、34条4項の自由財産の拡張までを条文に即して読みます。

自己破産の説明でほぼ必ず出てくる「99万円」という数字があります。この数字は破産法の条文には直接書かれていません。破産法から民事執行法へ、民事執行法から政令へと参照が三段に連なった先に、はじめて金額が現れます。この記事は、その参照をたどりながら、条文が「破産財団に属しない」と定めているものを確認していくものです。実際にどこまで手元に残るかは裁判所の判断によるため、ここで個別の結論を出すことはできません。
出発点:原則は「一切の財産」
破産法34条1項は、「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする」と定めています。2項は、開始前に生じた原因にもとづいて行うことがある将来の請求権も破産財団に属するとしています。まずここが原則です。出典:破産法 第34条(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)
第一の例外:34条3項1号が指す「金銭」
同条3項は「第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない」として二つを挙げます。その1号が、「民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭」です。金額そのものは書かれておらず、民事執行法に投げられています。
民事執行法131条3号は、差押えが禁止される動産として「標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」を挙げています。そして民事執行法施行令1条が、「法第百三十一条第三号(略)の政令で定める額は、六十六万円とする」と定めています。出典:民事執行法 第131条(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)/民事執行法施行令 第1条(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)
したがって、66万円に2分の3を乗じた額、すなわち99万円の金銭が、破産法34条3項1号によって破産財団に属しないことになります。よく言われる「99万円」は、この三段の参照の結果として出てくる数字です。
第二の例外:34条3項2号が拾う「差し押さえることができない財産」
3項2号は、「差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号に規定する金銭を除く。)」を挙げています。ただし書で、民事執行法132条1項の規定により差押えが許されたものと、破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは除かれます。
「差し押さえることができない財産」の中身は民事執行法にあります。131条の各号は次のとおりです。
| 号 | 差押えが禁止される動産(民事執行法131条) |
|---|---|
| 1号 | 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具 |
| 2号 | 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料 |
| 3号 | 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭(=66万円) |
| 4号 | 主として自己の労力により農業を営む者の、農業に欠くことができない器具・肥料・労役の用に供する家畜及びその飼料など |
| 5号 | 主として自己の労力により漁業を営む者の、水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具・えさ・稚魚など |
| 6号 | 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者の、その業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く) |
| 7号 | 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの |
| 8号 | 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物 |
| 9号 | 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類 |
| 10号 | 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物 |
| 11号 | 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具 |
| 12号 | 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの |
| 13号 | 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物 |
| 14号 | 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品 |
出典:民事執行法 第131条(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)
債権のほうは152条です。1項は、生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権と、給料・賃金・俸給・退職年金・賞与およびこれらの性質を有する給与に係る債権について、支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分(その額が政令で定める額を超えるときは政令で定める額に相当する部分)は差し押さえてはならないと定めます。2項は退職手当およびその性質を有する給与に係る債権の4分の3。政令の額は、支払期が毎月と定められている場合で33万円、毎半月で16万5千円、毎旬で11万円です。出典:民事執行法 第152条(2026年9月28日確認)/民事執行法施行令 第2条(2026年9月28日確認)
第三の道:34条4項の「拡張」
ここまでが条文で自動的に外れるものです。それとは別に、4項に拡張の規定があります。
裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。
読み取れることを分けておきます。
- 期間がある。開始決定があった時から、決定が確定した日以後1月を経過する日までの間。
- 申立てでも職権でもよい。破産者の申立てによるほか、職権でもできると書かれています。
- 考慮されるものが書いてある。生活の状況、開始時に有していた3項各号の財産の種類および額、収入を得る見込み、その他の事情。
- 破産管財人の意見を聴く。5項が、決定をするにあたって管財人の意見を聴かなければならないとしています。
- 却下には不服申立ての道がある。6項が、申立てを却下する決定に対して即時抗告ができるとしています。
出典:破産法 第34条第4項〜第6項(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)
条文に書かれていないこと
「現金は99万円まで、預貯金は20万円まで」といった線引きが説明されることがあります。これは条文の文言ではなく、各地の裁判所の運用に関わる部分です。全国共通の基準として公的機関が公表しているものを確認できなかったため、この記事ではその種の金額を書きません。申立てを予定している裁判所の運用は、その裁判所または代理人にご確認ください。
同じ理由で、破産管財人が選任される事件とそうでない事件の振り分け基準、および予納金の額も書いていません。裁判所は破産手続について「債務者の財産が少ない場合には、破産管財人を選任しないまま破産手続を終了することもあります」と説明していますが、金額の基準は示されていません(破産法216条1項は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、開始決定と同時に破産手続廃止の決定をしなければならないと定めています)。出典:破産(裁判所)(2026年9月28日確認)/破産法 第216条(e-Gov法令検索)(2026年9月28日確認)
入口の実務(裁判所が公表している範囲)
| 項目 | 裁判所の案内 |
|---|---|
| 申立先 | 原則として、債務者の本店所在地(法人の場合)又は住所地(自然人の場合)を管轄する地方裁判所 |
| 破産手続開始申立ての費用 | 収入印紙1,000円分(債権者による申立ての場合は2万円分) |
| 免責許可申立ての費用 | 収入印紙500円分 |
| 連絡用郵便料等 | 裁判所ごとに異なるため、申立先の裁判所へ確認 |
| 必要書類 | 裁判所ごとに異なるため、申立先の裁判所へ確認 |
出典:破産(裁判所)(2026年9月28日確認)
弁護士・司法書士に依頼する場合の費用については、法テラスが自己破産事件の依頼時に必要な費用の目安を公表しています。債権者1〜10社で着手金132,000円+実費23,000円の合計155,000円、11〜20社で154,000円+23,000円の177,000円、21社以上で187,000円+23,000円の210,000円(実際の費用は審査で決まり、必ずこの金額になるとは限らないと注記されています)。出典:自己破産 費用の目安(法テラス)(2026年9月28日確認)
免責とは別の話であること
この記事が扱ったのは「財産のうち何が破産財団に入らないか」であって、「借金が免責されるか」は別の条文(破産法252条以下)の話です。免責のほうは自己破産で借金はゼロになる?免責の仕組みと免責不許可事由に、手続後の生活は債務整理後の生活再建ロードマップにあります。
判断の前に相談できるところ
残せるかどうかは、財産の種類と生活の状況を具体的に見ないと動きません。早い段階で専門家に整理してもらえる窓口を挙げておきます。
- 弁護士(弁護士会の法律相談センター):「ひまわりお悩み110番」0570-783-110 にかけると、その地域に近い弁護士会の法律相談センターにつながります。全国約300か所で法律相談が行われており、相談時間はおおむね30分、相談料は地域や相談内容により異なるものの5,500円前後と案内されています(受付時間の記載はありません)。出典:ひまわりお悩み110番(日本弁護士連合会)(2026年9月28日確認)
- 司法書士(司法書士総合相談センター):全国約150か所で、借金問題を含む相談を受け付けていると案内されています。出典:司法書士総合相談センター一覧(日本司法書士会連合会)(2026年9月28日確認)
- 法テラス:サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時。祝日・年末年始を除く)。資力の基準を満たす場合、弁護士・司法書士による無料法律相談を1回30分・同一の問題につき3回まで利用できます。出典:法テラス・サポートダイヤル(2026年9月28日確認)/無料法律相談のご利用の流れ(法テラス)(2026年9月28日確認) 当サイトの法テラスの使い方ガイドもあわせてどうぞ。
- 日本クレジットカウンセリング協会:多重債務ほっとライン 0570-031640。公益財団法人であり、相談料は無料と案内されています。出典:公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会(2026年9月28日確認)
- 消費生活センター:消費者ホットライン「188」。契約や取引についてのトラブルの窓口です。出典:消費者ホットライン(消費者庁)(2026年9月28日確認)
- 財務局など:金融庁は、多重債務についての相談先として法テラス・日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会・日本貸金業協会・日本クレジットカウンセリング協会・全国銀行協会を案内し、全国の財務局の多重債務相談窓口の一覧も掲載しています。出典:相談・情報提供窓口(金融庁)(2026年9月28日確認)
どこから当たればよいか決められないときは、当サイトの相談先ディレクトリに窓口を用途別にまとめています。
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この記事の執筆者
マネーガイドジャーナル編集部
金融関連情報サイトの運営実績を多数持つ編集チーム。株式・不動産・FXなど幅広い金融資産の運用経験と、外資系ITコンサルティングファームで金融機関の案件に従事した実務経験をもとに、公式サイト・公的機関の一次情報を確認しながら記事を制作しています。
- 掲載情報は公式サイト・政府広報・金融庁等の一次情報を確認し、確認日を明記します
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- 特定サービスの利用をあおらず、リスクと公的な相談先を必ず併記します



