確定申告の所得税が払えない場合|延納・換価の猶予・納税の猶予の条件と期限
確定申告の所得税は、半分以上を期限内に納めれば残りを5月31日まで延納でき(所得税法131条)、半分も難しい場合は納期限から6か月以内に換価の猶予を申請できます(国税徴収法151条の2)。令和8年の利子税・延滞税の率、必要書類、予定納税の減額申請を、国税庁とe-Govの情報(2026年11月1日確認)で解説します。

確定申告で計算した所得税を期限までに全額納められない場合でも、使える仕組みは時期によって異なります。申告期限までに半分以上を納められるなら「延納」、半分も難しいなら税務署に「換価の猶予」または「納税の猶予」を申請する、という順で考えると整理しやすくなります。本記事では、所得税法・国税通則法・国税徴収法の条文と国税庁の案内(いずれも2026年11月1日確認)をもとに、それぞれの条件と期限を時期の順に説明します。
結論
- 半分以上を期限内に納められる場合:延納届出書を出せば、残りの納付を5月31日まで延ばせます(利子税は令和8年中の期間について年1.3%)。
- 半分も納められない場合:納期限から6か月以内に「換価の猶予」を申請すると、原則1年以内の分割納付が認められる可能性があります。
- 病気・事業の休廃止・大きな損失などの事情がある場合:「納税の猶予」の対象になり得ます。
- 猶予は免除ではありません。分割して納める制度で、納める税額そのものは減りません。
出典:No.9206 国税を期限内に納付できないとき(国税庁)(2026年11月1日確認)
手順1:申告期限までに半分以上を納められるなら「延納」
所得税法131条は、確定申告をした人が、納める所得税の2分の1以上を納期限までに納付し、延納届出書を提出した場合に、残りの納付をその年の5月31日まで延ばせると定めています。
- かかる費用:延納した期間には利子税がかかります。法律上の率は年7.3%ですが、特例により令和8年1月1日〜12月31日の期間は年1.3%です(令和7年は0.9%)。
- 令和7年分の日程:確定申告の納期限は令和8年3月16日(月)、延納分の納期限は令和8年6月1日(月)です。振替納税を利用している場合、確定申告分の振替日は令和8年4月23日(木)、延納分の振替日は令和8年6月1日(月)です。
出典:所得税法131条(e-Gov法令検索)/延滞税の割合(国税庁・利子税の割合を含む)/主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日(国税庁)(いずれも2026年11月1日確認)
延納は申告と同時に手続きできる、もっとも負担の軽い方法です。半分を用意できる見込みがあるなら、まずこれを検討してください。
手順2:半分も難しいなら、納期限から6か月以内に「換価の猶予」を申請
国税徴収法151条の2は、一時に納付すると事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがあり、納税に誠実な意思がある場合に、納期限から6か月以内の申請にもとづいて、1年以内の期間を限り換価(差し押さえた財産の売却など)を猶予できると定めています。猶予された税額は、原則として猶予期間中の各月に分割して納めます(同法152条)。
- 申請できない場合:ほかに国税の滞納がある場合は対象になりません(同法151条の2第2項)。
- 期間の延長:やむを得ない理由があれば延長でき、当初の期間と合わせて2年までです。
- 担保:原則として必要ですが、猶予する税額が100万円以下の場合、猶予期間が3か月以内の場合、担保にできる財産がない場合などは不要です(国税通則法46条5項ただし書を準用)。
- 延滞税:納期限の翌日から2か月を経過した日以後の期間について、延滞税が2分の1免除されます(国税通則法63条1項)。国税庁のFAQでは、許可された日にかかわらず申請した日から延滞税が軽減・免除されると説明されています。
- 期限を過ぎた場合:6か月を過ぎると、原則として申請による換価の猶予は受けられません。ただし、ほかの猶予を受けられる場合があるとして、早めの相談が勧められています。
出典:国税徴収法151条の2・152条(e-Gov法令検索)/G-9 換価の猶予の申請手続(国税庁)/国税の納税の猶予制度FAQ(国税庁・PDF)(いずれも2026年11月1日確認)
手順3:病気や事業の休廃止などがあれば「納税の猶予」
国税通則法46条2項は、災害・盗難、本人や生計を一にする親族の病気・負傷、事業の廃止・休止、事業の著しい損失などにより一時に納付できないと認められる場合に、申請によって1年以内の期間に限り納税を猶予できると定めています。延長は当初と合わせて2年までです(同条7項)。
延滞税の扱いは事情によって異なります。災害・病気などによる猶予では猶予期間に対応する延滞税が全額免除され、事業の廃止等による猶予では納期限の翌日から2か月を経過した日以後の期間について2分の1が免除されます(同法63条1項)。
出典:国税通則法46条・63条(e-Gov法令検索)/G-4 災害、盗難等により納付困難となったときの納税の猶予の申請手続(国税庁)(いずれも2026年11月1日確認)
申請に必要な書類と出し方
国税庁の案内では、申請には次の書類を使います。
- 納税の猶予申請書、または換価の猶予申請書
- 財産収支状況書(猶予を受ける金額が100万円を超える場合は、財産目録と収支の明細書)
- 担保が必要な場合は、担保の提供に関する書類
提出先は所轄の税務署です。国税庁のFAQには、「所轄の税務署(徴収担当)にお電話ください」とあり、申請書はe-Taxや郵送でも受け付けると書かれています。様式は国税庁の「納税に関する総合案内」のページから入手できます。
出典:納税に関する総合案内(国税庁)/国税の納税の猶予制度FAQ(国税庁・PDF)(いずれも2026年11月1日確認)
窓口で伝える内容や、家計の資料の準備については税金の猶予・分納を申し出るときの準備書類と確認事項にまとめています。
何もしないと:延滞税・督促・差押え
- 延滞税:法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて自動的にかかります。令和8年中の割合は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、2か月を経過した後が年9.1%です。
- 督促状:督促状は、原則として納期限から50日以内に送られます(国税通則法37条2項)。
- 差押え:督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しない場合、税務署は財産を差し押さえなければならないとされています(国税徴収法47条1項1号)。
出典:延滞税の割合(国税庁)/国税通則法37条(e-Gov法令検索)/国税徴収法47条(e-Gov法令検索)(いずれも2026年11月1日確認)
差押えの手続と、給与や預金が差し押さえられた場合の扱いは差押えの二つの手続と給与を差し押さえられたときに手元に残る額の決まり方で解説しています。
来年の負担を軽くする:予定納税の減額申請
前年の所得税額をもとに計算した予定納税基準額が15万円以上の人には、7月(第1期)と11月(第2期)に予定納税があります。今年の所得が大きく減る見込みの場合、所得税法111条にもとづき、6月30日の現況で見積もった場合は7月15日まで、10月31日の現況で見積もった場合は11月15日までに減額の申請ができます。令和8年分の第2期の納期限は令和8年11月30日(月)です。
出典:所得税法111条(e-Gov法令検索)/No.2040 予定納税(国税庁)(いずれも2026年11月1日確認)
納付方法による手数料の違い
| 方法 | 上限 | 手数料 |
|---|---|---|
| コンビニ納付(バーコード・QRコード) | 30万円以下 | 不要 |
| スマホアプリ納付 | 30万円以下 | 不要 |
| クレジットカード納付 | 1回1,000万円未満 | 必要(1万円までごとに99円・税込) |
クレジットカード納付の決済手数料は国の収入にはならないと国税庁は説明しています。カードで納めても、カード会社への支払いが後にずれるだけで、支払う総額は手数料の分だけ増えます。
出典:G-2-4 クレジットカード納付の手続(国税庁)/G-2-5 スマホアプリ納付の手続(国税庁)/G-2-7 コンビニ納付(バーコード)(国税庁)(いずれも2026年11月1日確認)
納税のための借入れ・現金化について
所得税には上記の延納や猶予の制度があり、猶予が認められれば延滞税も軽減されます。これらを使わずに、クレジットカードの現金化や給与ファクタリングなど、金融庁や消費者庁が注意を呼びかけている方法で資金を用意すると、公的な制度で分割できたはずの負担を、条件の悪い債務に置き換えることになります。まず税務署に相談してください。現金化の仕組みと問題点はクレジットカード現金化とはで解説しています。
よくある質問
猶予が認められれば税金は減りますか
減りません。国税庁のFAQは、猶予は期限後に分割して納められるようにする制度であり、税金の納付そのものが免除されるわけではないと説明しています。軽減・免除されるのは延滞税です。
住民税も同じ窓口で相談できますか
できません。国税庁のFAQでは、住民税などの地方税は都道府県・市区町村が窓口とされています。住民税については住民税が払えない場合をご覧ください。
予定納税や修正申告の分も猶予の対象になりますか
国税庁のFAQは、予定納税や修正申告による納付分も、要件を満たせば猶予を受けられると説明しています。
自己破産すれば所得税は払わなくてよくなりますか
租税等の請求権は、破産法253条1項1号により免責の対象外とされています(出典:破産法253条(e-Gov法令検索)、2026年11月1日確認)。借金を整理しても税金は残るため、税務署での相談が必要です。債務整理全体の概要は債務整理とはにまとめています。
相談先
- 所轄の税務署(徴収担当):延納・猶予の手続き、分割の相談。
- 自立相談支援機関:税金以外にも支払いが重なっている場合の家計全体の相談。生活困窮者自立支援制度(厚生労働省)
- 法テラス:借金が重なっている場合の法律相談。サポートダイヤル 0570-078374。日本司法支援センター
税金全般の分割・差押えの流れは税金が払えないときの分割納付に、税金が戻ってくる手続は還付申告にまとめています。
この記事の執筆者
マネーガイドジャーナル編集部
金融関連の情報サイトについて多数の運営実績を持つ編集チームです。株式・不動産・FXなど幅広い金融資産の運用経験と、外資系ITコンサルティングファームで金融機関の案件に従事した実務経験をもとに、公式サイト・公的機関の一次情報を確認しながら記事を制作しています。
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