後期高齢者医療保険料が払えない場合|督促・差押え、1年で特別療養費・1年6か月で給付の一時差止めと減免の相談
後期高齢者医療保険料を滞納すると、督促・延滞金・差押えのほか、納期限から1年で医療費をいったん全額負担する特別療養費、1年6か月で保険給付の一時差止めの対象になることがあります。法律・施行規則と広域連合の案内(2026年11月4日確認)で流れと減免を解説します。

75歳以上の方などが加入する後期高齢者医療制度の保険料は、市区町村が徴収し、納め方は年金からの天引き(特別徴収)と納付書・口座振替(普通徴収)の2通りです。納期限を過ぎると督促状が届き、滞納が続くと、延滞金・財産の差押えに加えて、医療機関の窓口でいったん医療費の全額を支払う「特別療養費」の扱いや、保険給付の一時差止めの対象になることがあります。
本記事では、高齢者の医療の確保に関する法律・同法施行規則(e-Gov法令検索)と、愛知県・千葉県・東京都の後期高齢者医療広域連合の案内(いずれも2026年11月4日確認)をもとに、納期限からの経過期間ごとに何が起きるかを先に表で示し、そのあとで納め方別の注意点、減免、相談先を説明します。
納期限からの経過期間ごとに起きること
| 納期限からの期間 | 起きること | 根拠・案内 |
|---|---|---|
| 納期限の翌日〜 | 督促状が送付されます。文書・電話などによる納付の催告が行われることもあります。督促をした場合、市区町村は条例で定めるところにより延滞金を徴収できます。 | 地方自治法231条の3第1項・第2項、愛知県広域連合の案内 |
| 督促状の指定期限を過ぎても未納 | 地方税の滞納処分の例により、財産調査・差押え・換価が行われることがあります。世帯主・配偶者(連帯納付義務者)に請求や滞納処分が行われることもあります。 | 高齢者の医療の確保に関する法律108条・113条、地方自治法231条の3第3項、愛知県広域連合の案内 |
| 1年以上 | 災害など法令で定める特別な事情がなければ、医療費をいったん全額自己負担する「特別療養費」の支給対象となることがあります。この場合、事前に通知があります。 | 同法82条1項・3項、同法施行規則53条の3(期間は1年間)、愛知県広域連合の案内 |
| 1年6か月以上 | 保険給付の全部または一部の支払いが一時差し止められることがあります。特別療養費の対象になっている方は、差し止められた給付から滞納保険料が差し引かれることがあります。 | 同法92条1項・3項、同法施行規則72条(期間は1年6月間)、愛知県広域連合の案内 |
| 2年 | 保険料を徴収する権利は2年で時効により消滅します。ただし、督促は時効の更新の効力を生じます。 | 同法160条 |
同法82条・92条は、いずれも「市町村が保険料納付の勧奨等を行つてもなお当該保険料を納付しない場合」を前提にしており、勧奨には「当該保険料の納付に係る相談の機会の確保」も含まれると定めています(82条1項)。特別療養費や一時差止めの前提として、市区町村による納付の勧奨や相談の機会の確保が位置づけられています。督促状や催告が届いた段階で市区町村に連絡し、納付や減免について相談してください。
出典:高齢者の医療の確保に関する法律82条・92条・108条・113条・160条(e-Gov法令検索)/高齢者の医療の確保に関する法律施行規則53条の3・72条(e-Gov法令検索)/地方自治法231条の3(e-Gov法令検索)/保険料を滞納すると(愛知県後期高齢者医療広域連合)/滞納処分(愛知県後期高齢者医療広域連合)(いずれも2026年11月4日確認)
「特別療養費」とは
特別療養費は、保険料を滞納している方が医療機関で受診したときに、通常の療養の給付(窓口で自己負担分だけを支払う扱い)に代えて支給されるものです(同法82条1項)。愛知県後期高齢者医療広域連合は「医療費を一旦全額自己負担する特別療養費」と説明しています。特別療養費の支給を受けるには、受診した医療機関や療養の費用の額などを記載した申請書を広域連合に提出します(同法施行規則54条)。
滞納している保険料を完納した場合や、滞納額が著しく減少した場合、災害などの特別な事情がある場合は、通常の療養の給付に戻ります(同法82条4項)。
千葉県後期高齢者医療広域連合は、保険料を滞納していても、マイナ保険証や資格確認書は有効期限内であれば使用できるとしたうえで、「保険料の滞納が続くと資格確認書(特別療養費)が交付される場合があります」と案内しています。
出典:高齢者の医療の確保に関する法律82条(e-Gov法令検索)/同法施行規則54条(e-Gov法令検索)/千葉県後期高齢者医療広域連合|保険料を滞納した場合にマイナ保険証または資格確認書は使えますか。(いずれも2026年11月4日確認)
納め方別の注意点
年金から天引き(特別徴収)の方
東京都後期高齢者医療広域連合によると、公的年金の受給額が年額18万円以上の方は、原則として2か月ごとに支払われる年金から2か月分に相当する保険料が天引きされます。天引きされている間は、本人の納め忘れは通常起きません。
ただし同広域連合は、年度の途中で保険料が増額になった場合(増額分は納付書で納付)、年金の支払調整・差止めなどがあった場合、年度の途中で転居した場合や制度の対象になった場合(しばらくの間)などは、特別徴収の対象にならないと案内しています。天引きだと思っていた保険料の一部が納付書での納付に切り替わっていることがあるため、市区町村から届く通知書で納め方を確認してください。
納付書・口座振替(普通徴収)の方
普通徴収の保険料は本人が納め、世帯主と配偶者も連帯して納付する義務を負います(同法108条)。愛知県後期高齢者医療広域連合は、本人が納付しないときは連帯納付義務者に保険料を請求し、滞納処分を行うことがあると案内しています。
東京都後期高齢者医療広域連合の案内では、普通徴収の納期限は納付月の月末です。また、国民健康保険料(税)の口座振替は引き継がれないため、後期高齢者医療保険料の口座振替を希望する場合は新たに手続きが必要です。国民健康保険から移った方は、口座振替の手続きが改めて必要な点に注意してください。
出典:保険料の納め方(東京都後期高齢者医療広域連合)/高齢者の医療の確保に関する法律107条・108条(e-Gov法令検索)/保険料を滞納すると(愛知県後期高齢者医療広域連合)(いずれも2026年11月4日確認)
払えないときの減免・徴収猶予
高齢者の医療の確保に関する法律111条は、後期高齢者医療広域連合が条例で定めるところにより、特別の理由がある方の保険料を減免し、または徴収を猶予することができると定めています。基準は広域連合ごとに条例などで決まります。
東京都後期高齢者医療広域連合の例では、次のような扱いです。
- 対象:本人や世帯主が、災害等で資産に著しい損害を受けたとき、失業や事業の休廃止等で収入が著しく減少したときなどで、預貯金など利用できる資産等を活用しても保険料を納められなくなった場合。申請が必要です。
- 失業の範囲:本人の意思に反して離職を余儀なくされた非自発的失業に限られ、自己都合の退職、定年退職、契約期間の満了による退職などは対象外です。
- 期間:突発的な収入減少による場合は原則3か月以内で、必要に応じてさらに3か月の延長ができます(当該年度内6か月が限度)。災害等の場合は、原則として当該年度内で災害発生日以降の保険料が対象です。
愛知県後期高齢者医療広域連合も、納付が困難な場合は「『払えないから』とそのままにせず、お早目にご相談ください。」とし、相談は市区町村の窓口で受け付けていると案内しています。
出典:高齢者の医療の確保に関する法律111条(e-Gov法令検索)/保険料の減免(東京都後期高齢者医療広域連合)/保険料の納付が困難な場合(愛知県後期高齢者医療広域連合)(いずれも2026年11月4日確認)
相談先
- お住まいの市区町村の後期高齢者医療制度の担当窓口:保険料の納付・分割・減免の相談。保険料を徴収するのは市区町村です。
- 都道府県の後期高齢者医療広域連合:制度全般や減免の基準の確認。
- 自立相談支援機関:保険料以外の支払いも重なっている場合の家計全体の相談。生活困窮者自立支援制度(厚生労働省)
- 法テラス:借金が重なっている場合の法律相談。サポートダイヤル 0570-078374。日本司法支援センター
65歳以上の方の介護保険料の滞納については介護保険料を滞納するとどうなる?で、高齢の方の家計全体の相談先は高齢でお金がないときで解説しています。税や保険料が重なっている場合の順番は滞納の優先順位、差押えの仕組みは差押えの2つの流れ、分割や猶予を申し出るときの準備は猶予・分納を申し出るときの準備書類にまとめています。
この記事の執筆者
マネーガイドジャーナル編集部
金融関連の情報サイトについて多数の運営実績を持つ編集チームです。株式・不動産・FXなど幅広い金融資産の運用経験と、外資系ITコンサルティングファームで金融機関の案件に従事した実務経験をもとに、公式サイト・公的機関の一次情報を確認しながら記事を制作しています。
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