給料が支払われないときの対処法|労基署への申告と請求の流れ
会社が給料を支払わない場合、労働基準法違反の可能性があります。労働基準監督署への申告、内容証明での請求、退職後の賃金に付く年14.6%の遅延損害金、賃金請求権の時効(当分3年)まで、一次情報をもとに対処法を整理します。

給料は、決められた日に全額を支払うのが原則です(労働基準法第24条=賃金全額払いの原則)。会社が正当な理由なく給料を支払わないことは、法律違反の可能性があります。ヤミ金や違法な現金化に頼る前に、正規の対処法を確認してください。
①労働基準監督署に申告する
労働者は労働基準法第104条に基づき、労働基準監督署へ申告できます(退職後でも可能)。監督署は調査を行い、法違反が認められた場合は会社へ「是正勧告」を行います。ただしこれは行政指導であり、強制的に取り立てる仕組みではありません。回収は次の民事手続きと合わせて考えます。
②内容証明・民事手続きで請求する
会社が存続している場合は、内容証明郵便での請求のほか、少額訴訟・支払督促・労働審判・通常訴訟といった民事手続きで回収を図ります。手続きに迷うときは、法テラスや各都道府県の労働局・労働相談窓口に相談できます。
退職後の未払い賃金に付く年14.6%の遅延損害金
退職した労働者への未払い賃金には、賃確法により退職日の翌日から支払日まで年14.6%(を超えない範囲)の遅延利息が付きます(在職中の賃金より高い利率です)。天災など、やむを得ない事由の期間は除きます。
請求できる期間(時効)
賃金請求権の消滅時効は法改正により5年(当分の間は経過措置で3年)です(2020年4月1日以降に支払期日が来る賃金に適用)。退職金の請求権の時効は5年です。時効にかからないよう、早めに対応することが大切です。
労基署へ相談する前の準備
- 未払いの範囲を特定する:何月分の給料か、残業代・手当も含むのか、金額の根拠(労働条件・勤務実績)を整理します。
- 証拠を集める:雇用契約書・労働条件通知書・給与明細・タイムカードやシフト表・出退勤がわかる記録(メールやアプリの履歴でも)・振込履歴・会社とのやり取りを手元にそろえます。
- 会社へ記録に残る形で請求する:口頭だけでなく、メールや書面など後から確認できる形で支払いを求めます。
- 労働基準監督署へ相談・申告する:会社の所在地を管轄する労基署へ相談します。相談先に迷う場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーが最初の窓口になります。相談は無料です。
証拠がすべてそろうまで待つ必要はありません。手元にある資料で相談を始め、不足分は窓口の助言を受けながら集めることが現実的です。特に出退勤の記録は、日がたつほど集めにくくなるため、未払いに気づいた時点から手帳やスマートフォンに勤務時間を記録し続けることをおすすめします。給与明細は毎回必ず保管し、会社との会話も日時と内容をメモに残してください。原本が用意できない資料は、写真やコピーでも構いません。形式にこだわらず、後から確認できる状態にしておくことが大切です。
状況別の考え方
- 在職中で言い出しにくい:労働者が労基署へ申告したことを理由に、会社が解雇などの不利益な取扱いをすることは労働基準法で禁止されています。まず匿名での情報提供や相談から始める方法もあります。
- 「待ってくれ」と言われ続けている:支払いの約束が繰り返し破られる場合、待つだけでは状況は変わりません。時効もあるため、証拠を集めながら労基署への相談や法的手続きを検討してください。会社の経営が悪化している場合は、倒産時に使える制度もあわせて確認してください。
- 給料が手渡しで記録がない:明細がなくても、出勤の記録・シフトのやり取り・ご自身のメモなども事情を伝える材料になります。手元にある資料を持って、まず相談してください。同じ状況の同僚がいれば、その証言が助けになる場合もあります。
- 一部だけ支払われている:賃金は全額払いが原則です。一部の支払いがあることを理由に、残りの請求をあきらめる必要はありません。
- 「業績が悪いから」と言われた:経営難であっても、働いた分の賃金の支払い義務がなくなるわけではありません。会社の事情を考慮して待ち続けるのではなく、支払計画を書面で示してもらい、守られない場合は労基署へ相談してください。支払予定日は口約束ではなく、書面やメールで残る形にしてもらうことが重要です。
本文で解説したとおり、賃金の請求には時効があります。支払いを待っている間も時効は進むため、請求の意思を記録に残る形で示し、早めに窓口へ相談することが、受け取れる額を確保することにつながります。特に退職を考えている場合は、退職前に証拠を確保しておくと、その後の手続きが円滑に進みます。
お金に困っても「給料の買い取り」には頼らないことが重要
給料日前の資金難につけ込み、「給料(賃金債権)を買い取って先にお金を渡す」とうたう業者がいますが、こうした給与ファクタリングは実質的に高利の貸付にあたるとして、金融庁などが注意喚起しています。「買い取りだから借金ではない」「審査なしですぐ現金化」といった説明は、違法な貸付でよく使われる勧誘の文言です。ヤミ金や現金化と同様に利用を避け、生活費が足りない場合は公的窓口に相談してください。未払いが原因で生活が苦しいことは、労基署や自治体窓口への相談時にも必ず伝えてください。
よくある質問
Q. 証拠がほとんどありません。相談できますか?
A. 相談できます。証拠が少なくても、労基署や総合労働相談コーナーで、事情に応じて集めるべき資料の助言を受けられます。出勤時間や会社とのやり取りは、すぐに記録を始めてください。相談したこと自体が不利に扱われることのないよう、法律上の保護もあります。
Q. 相談や申告にお金はかかりますか?
A. 労基署・総合労働相談コーナーへの相談は無料です。裁判などの民事手続きには費用がかかりますが、収入等の条件を満たせば法テラスの民事法律扶助を利用できる場合があります。費用面の不安も含めて、まず無料の窓口で相談し、その後の対応を決めることをおすすめします。
Q. アルバイト・パートでも同じように請求できますか?
A. 雇用形態にかかわらず、働いた分の賃金を請求する権利は同じです。学生アルバイトの方も、労基署に相談してください。すでに辞めた職場の未払い分についても、退職後に申告・請求できます。
一人で抱え込まないための体制づくり
給料の未払いは、家計だけでなく心身にも大きな負担がかかる問題です。会社とのやり取りや窓口への相談が長引くと、次第に気力を消耗し、落ち着いた判断が難しくなることもあります。そのため、早い段階で、一人で問題を抱え込まない体制をつくることが大切です。
- 家族に状況を共有する:家計への影響を一緒に整理し、支払いの猶予相談などを分担できます。窓口への相談に同行してもらうのも一つの方法です。
- 労働の相談と生活費の相談を切り分ける:会社への請求の相談と、当面の生活費の相談は窓口が異なります。分けて考えることで、それぞれの課題が整理され、負担も軽くなります。
- 体調の変化に気を配る:眠れない・食欲がないといった不調が続くときは、無理にやり取りを続けず、まず休むことも立て直しの一部です。
未払いの問題は解決までに時間がかかることもあります。周囲の協力と公的な窓口を組み合わせ、生活と健康を守りながら対応を進めてください。
Q. 家族に未払いのことを話せていません。どうすればよいですか?
A. 給料の未払いは働く人の落ち度ではなく、隠す必要はありません。家計に直結する問題のため、支払いの優先順位や猶予の相談を一緒に進めるうえでも、早めに共有することが生活の立て直しに役立ちます。話しにくい場合は、窓口へ相談した内容を伝えることから始めることをおすすめします。
関連記事
出典:厚生労働省 確かめよう労働条件(賃金の時効)、厚生労働省(賃金請求権の消滅時効リーフレット)
この記事の執筆者
マネーガイドジャーナル編集部
金融関連の情報サイトについて多数の運営実績を持つ編集チームです。株式・不動産・FXなど幅広い金融資産の運用経験と、外資系ITコンサルティングファームで金融機関の案件に従事した実務経験をもとに、公式サイト・公的機関の一次情報を確認しながら記事を制作しています。
- 掲載情報は、公式サイト・政府広報・金融庁等の一次情報で確認し、確認日を記載しています
- 確認できなかった情報は「確認できず」と記載し、推測による断定は行いません
- 特定のサービスの利用を勧めることはせず、リスクと公的な相談先をあわせて掲載しています



