給料は前借りできる?労働基準法25条「非常時払い」と前払いサービス・給与ファクタリングの違い【2026年7月】
給料の前借りには、労働基準法25条の「非常時払い」(法的権利)、勤務先の福利厚生型の給料前払いサービス、そして違法とされた給与ファクタリングがあります。それぞれの違いを正確に解説します。

「給料を前借りしたい」というとき、似て非なる3つを区別することが重要です。労基法25条の非常時払い(法的権利)、福利厚生型の給料前払いサービス、そして違法とされた給与ファクタリングです。
労働基準法25条「非常時払い」(法的権利・無料)
労働者が出産・疾病・災害その他の非常の場合の費用に充てるため請求したとき、使用者は支払期日前でもすでに働いた分(既往の労働)に対する賃金を支払わなければなりません(労基法25条)。あくまで働いた分の前倒しで、まだ働いていない先の賃金を請求する権利ではなく、手数料・利息はかかりません。出典:労働基準法(e-Gov)
福利厚生型の「給料前払いサービス」
勤務先が福利厚生として導入し、従業員がすでに働いた分の給与の範囲で給料日前に受け取れる仕組みです。勤務先が導入・把握している点が本質で、手数料が発生する場合が多く、次の給料日に前払い分が差し引かれます。
【要注意】給与ファクタリングは違法
「給与債権を買い取る」名目で個人に現金を渡し、給料日後に手数料込みで返させる給与ファクタリングは、最高裁令和5年2月20日判決で貸金業法・出資法上の「貸付け」にあたると判断されました。勤務先は関与せず、貸金業登録のない業者は手数料の多寡にかかわらず違法(実質ヤミ金)です。年利換算で数百〜数千%になる例もあり、消費者庁・金融庁が注意喚起しています。詳しくはヤミ金・個人間融資の注意もご覧ください。
それでも足りないときの相談先
- 公的な貸付・給付:急にお金が必要なとき国・自治体から借りる・もらう方法
- 消費者ホットライン「188」/自立相談支援機関(家計・生活の相談)
- 法テラス:借金・法的トラブルの無料相談
※クレジットカード現金化やソフト闇金・個人間融資は違法・規約違反のリスクが高く、避けるべき手段です。
非常時払いを会社に申し出る手順
本文で解説した非常時払いを実際に使うときは、次の順で進めるとスムーズです。
- 就業規則・社内制度の確認:前払い・前借りに関する社内の定めや、福利厚生型の前払いサービスの有無を先に確認します。社内制度があるなら、そちらのほうが手続きが早い場合があります。
- 申し出る相手:給与を扱う部署(人事・総務・給与担当)または直属の上長。小規模な職場なら経営者本人です。誰に言えばよいか分からなければ、まず身近な上長に相談の窓口を尋ねましょう。
- 伝える内容:出産・疾病・災害などの事情が生じたこと、そのための費用として、すでに働いた分の賃金の支払いを希望すること。希望する受け取り時期もあわせて伝えます。
- 記録を残す:口頭だけでなく、メールや書面でも申し出ておくと、後の行き違いを防げます。事情を示す書類(診断書など)の要否は会社と相談してください。
ご自身の事情が「非常の場合」に当たるかどうかの判断に迷うときは、会社と話す前に労働基準監督署に問い合わせて確認することもできます。制度の性質上、対象は本文の通り「すでに働いた分」に限られる点は押さえておきましょう。給与計算の締め日や支払いの実務があるため、申し出から受け取りまでの段取りは会社と相談して決めることになります。
会社が応じてくれないときの相談窓口
申し出ても取り合ってもらえない、理由なく先延ばしにされるといった場合は、実在の公的窓口に相談できます。
- 労働基準監督署:労働基準法に関する相談・申告の窓口です。申し出の経緯が分かる記録(メール・メモ・日時の控え)を持参すると相談がスムーズです。
- 総合労働相談コーナー:各都道府県労働局などに設けられた無料の相談窓口で、賃金や労働条件のトラブル全般を相談できます。どこに相談すべきか分からない場合の最初の窓口としても使えます。
個々のケースで会社にどのような対応が求められるかは事情により異なります。ネット上の断定的な情報をうのみにせず、必ず公的窓口で確認してください。また、会社と感情的に対立する前に第三者の窓口を挟むことは、その後も働き続けるうえでも有効な選択です。
前払いサービスを使う前のチェック
- 勤務先が正式に導入しているか:本文の通り、福利厚生型は勤務先の導入が前提です。勤務先と無関係に「給与を前払いする」と勧誘してくる業者は、違法な給与ファクタリングを疑ってください。
- 手数料の有無と負担者:利用のたびに手数料がかかる仕組みの場合、受け取りを繰り返すほど手取りが目減りします。手数料を会社と本人のどちらが負担するかも確認しましょう。
- 受け取れる範囲:対象はすでに働いた分に限られます。まだ働いていない分まで受け取れるとうたう仕組みは、前払いサービスではなく貸付やそれを装った違法な手段の可能性があります。
- 翌月の家計への影響:前払い分は次の給料から差し引かれます。翌月の手取りが減ることを織り込んで使わないと、毎月の前倒しが常態化します。
これらの確認は、サービスの利用規約と勤務先の案内で行えます。不明点を残したまま使い始めないことが、後のトラブルを防ぐ一番の近道です。
前借りが向くケース・向かないケース
- 向くケース:急な出費が一度きりで、翌月以降は通常の家計に戻れる見通しがあるとき。すでに働いた分を受け取るだけなので、利息のかかる借入より合理的な場合があります。
- 向かないケース:毎月の生活費が恒常的に足りないとき。給料の前倒しは翌月を確実に苦しくするため、根本解決になりません。この場合は自立相談支援機関での家計相談と公的な貸付・給付の確認が先です。
- 判断に迷うケース:「今回だけのつもり」が続いているなら、すでに恒常的な不足に入りかけています。前払いの利用回数が増えてきたこと自体を、家計を見直すサインと捉えてください。
「前借りできないなら」とクレジットカード現金化や個人間融資・ヤミ金に流れるのが最悪の展開です。金融庁・消費者庁が注意喚起する違法・危険な手段であり、選択肢に入れないでください。
よくある質問
アルバイト・パートでも非常時払いを請求できますか?
労働基準法は正社員に限らず労働者に広く適用されるとされています。雇用形態を理由に門前払いされた場合も含め、ご自身の働き方や事情が対象に当たるかは、労働基準監督署に確認してください。
前借りを申し出たことで不利益な扱いを受けたら?
申し出をきっかけとした嫌がらせや処遇の変更に悩んだときは、一人で抱えず総合労働相談コーナーに相談してください。いつ・誰に・何を言われたかの記録(メモ)が役立ちます。相談したこと自体が会社に伝わるかどうかも、窓口で確認できます。
退職が決まっていても請求できますか?
対象がすでに働いた分の賃金である点は在職中と変わりませんが、退職前後の賃金の支払いには別の定めも関わります。退職時の賃金の受け取りで揉めている場合も含めて、個別の取り扱いは労働基準監督署に確認してください。
会社に事情(病気や家庭の問題)を詳しく話したくありません。
非常時払いは事由に該当することが前提のため一定の説明は必要になりますが、どこまで詳細を伝えるかは相談の余地があります。伝え方に迷う場合も、労働基準監督署や総合労働相談コーナーで事前に相談できます。プライバシーに関わる内容の扱いが不安なときは、その懸念自体を窓口で伝えて構いません。
まとめ
合法な「給料前払い」は、労基法25条の非常時払いか、勤務先が導入する福利厚生型サービスです。勤務先が関与しない「給与ファクタリング」は違法な貸付にあたるため、利用しないでください。
この記事の執筆者
マネーガイドジャーナル編集部
金融関連情報サイトの運営実績を多数持つ編集チーム。株式・不動産・FXなど幅広い金融資産の運用経験と、外資系ITコンサルティングファームで金融機関の案件に従事した実務経験をもとに、公式サイト・公的機関の一次情報を確認しながら記事を制作しています。
- 掲載情報は公式サイト・政府広報・金融庁等の一次情報を確認し、確認日を明記します
- 確認できない情報は「確認できず」と正直に記載し、憶測で断定しません
- 特定サービスの利用をあおらず、リスクと公的な相談先を必ず併記します

